DOG MONTHより抜粋
「ワン」はひとつではありません
人間社会は、犬達にとってストレスの多い環境です。
騒音や汚れた空気、コンクリートの歩道、紫外線、集合住宅での生活、長い留守番…。 また、する事がなくて退屈だったり飼い主とのコミュニケーションギャップに苦しんでいたり、日々の生活の中での混乱も彼らの大きなストレスになっています。言葉で直接訴える事のできない犬達にとって、吠えたりいたずらをしたり逆に無表情になったりするのは、飼い主に助けを求める犬達の悲鳴なのかもしれません。
しかしそんな彼らのSOSに気づかず、吠えたら「無駄吠え」だと決めつけ、イタズラをしたら一方的に責め、アレルギーが出ても医療的な治療だけで治そうとしていませんか?
犬の心は、私達が思っている以上に繊細で傷つきやすいもの。言葉が通じたらと願っているのは人間ではなく、もしかしたら犬なのかもしれません。
犬の「ワン」は、ひとつの意味だけではないのです。
犬にも知る権利があります
人と犬はちがう生き物です。お互い異なる習性を持っています。
「吠える」「咬む」「掘る」「飛びつく」「追いかける」などの犬が持つ習性を、人は、狩りや羊の世話などの仕事の中でおおいに利用してきました。
やがてコンパニオンとして人間と一緒に暮らすことになった犬たち。
状況は変わっても、彼らが持って生まれた習性は変わりません。「吠える」「咬む」などの行為を、人は犬の問題行動と呼びます。
でも、戸惑っているのは犬たちの方かもしれません。犬だって人間の子供と同じように、していい事といけない事は、教えなければ解らないのです。
今や多くの人たちが「犬は家族の一員」と言います。
本当にそう思うなら、人間の子供にするように犬たちにも人間社会のルールやマナーを、理解できる方法で教えてあげて下さい。犬が人間社会の中で幸せに暮らすためには、飼い主の愛情ある教育「しつけ」が必要です。
散歩は犬の義務教育です
犬の散歩はトイレの為ではありません。運動の為だけでもありません。
散歩は犬の本能を満たす「狩り」なのです。
犬の祖先であるオオカミたちにとって、狩りは生きる為の日課でした。
それは単に食べていく為だけでなく、大人たちから狩りの方法を学び、五感を養い、仲間とのチームワークやコミュニケーションを深める「冒険」の時。
生きていく為の全ての知恵を学ぶ、「学習」の時だったのです。
人と暮らし始めて狩りをする必要のなくなった犬たちにも、その本能は残っています。
車という巨大な物体が危険であることを学び、飼い主が投げるボールは獲物を追う心を満たし、信号では待つほうが安全だと知り、それらを教えてくれる飼い主とのコミュニケーションを楽しみます。
充実した散歩の時間は、心の安定した犬を育てる絶好のチャンスなのです。
野生の犬はいません
ダックスの足が短いのは何故?穴に入れて穴熊を追わせるため。
ブルドッグの鼻がぺちゃんこなのは何故? 牛を追う時に牛に噛みついたままでも息が出来るように。
今や400種類以上だといわれる犬種のすべては、いろいろな目的のため、人間が交配を重ねて作りだしてきたものです。
犬は野生動物ではありません。家畜なのです。
人間の役にたたせるために作り出され、犬たちも人間の側にいることに利点を見つけ、お互いに最良の友として生きてきました。
そして今、年間何万頭もの犬たちが「不要」として殺処分されています。犬は、私たち人間が、そんな簡単に見放す事のできない生き物だったはずなのに…。
犬には、人と一緒に暮らしていくしか生きる道はありません。
人には、自分たちが作り出した生き物を見守る責任があるのです。
犬は癒しグッズではありません
動物を飼う理由は?と聞かれると「心が安らぐ」や「子供の情操教育」と答える人がほとんどです。 でも、癒されたり子供達に優しいメッセージを受け取ってもらうためには、まず自分の周りの動物をリラックスさせ、ハッピーにしてあげることが大事なのです。
太古の昔、人が犬を側においた理由のひとつに「周囲の安全を確かめるため」というのがありました。人間よりも五感の優れた犬。彼らがリラックスして眠っている姿からは「安全」というメッセージが受け取れ、人も安らぐことができました。逆に吠えて不安な様子から人は「危険」というメッセージを感じ取り、周囲を警戒していました。
この感覚は、たとえ自分が気付かなくても、今でも私達の心の奥底に受け継がれています。
犬をリラックスさせて初めて得られる本当の安らぎ。
あなたは、自分の周りの動物達からどんなメッセージを受け取っていますか?